「ハードボイルド・エッグ」:荻原 浩

ハードボイルド・エッグ
ハードボイルド・エッグ
  • 発売元: 双葉社
  • 発売日: 1999/10
  • 売上ランキング: 750884
  • おすすめ度 4.0

お気に入り度:rating_40.gif

同じ荻原 浩氏の「噂」と一緒に買った本です。
最初に「噂」の方を読んでいたので、今回のコレには非常に驚きました。
全然ちがう。
徹底的にちがう。
でも、なんか、こっちの方が生き生きしてます。

えーとね、かなり「ノリ」重視な本です(笑)
人によっては、まるで乗れずにおいてきぼりをくらい、ちっとも楽しめない可能性もあります。
コメディー小説です。
しかもかなり悪のりな。

最上俊平(33歳)は、名探偵フィリップ・マーロウのハードボイルドな生き方に超憧れています。
憧れるあまり、自分もハードボイルドになろうと探偵業を始めますが、いつのまにか動物専門の何でも屋になっています。
ハードボイルドに迷子のペットちゃんを探し、ハードボイルドに依頼主に届けます。
その姿勢は徹底してます。
こーゆー人が実際にいた場合、周りの人は、間違いなく、この人は変な人だと思います(笑)
だから、依頼主からも変な人だと言われます。
でも、平気。だって、ハードボイルドだから。

ハードボイルドを追求するあまり、周りの状況を見ない様は素敵です。徹底的に。
とにかく重要なのは、自分がハードボイルドであり続ける所。
なのだけど、この主人公は根が子供っぽいので、ありえない行動を沢山します。
自分を「変な人」扱いした人の家のチャイムを素早く連続してプッシュして、全速力で逃走。ハードボイルドに。
「あれ?これ、ピンポンダッシュだ。嫌がらせだ。」と読んでてびっくりしました(笑)
びっくりして読み直しちゃった。
そしたら、やっぱりピンポンダッシュしてました(笑)

こーゆー乗りを受け入れられるか、受け入れられないかで、この本を面白いと思えるかどうかが別れます。
「なに、これ?悪ふざけしすぎ。くだらな。」なんて冷静に思ってしまうと、それ以後のページをめくるのが非常に苦痛かと思います。
「ばかじゃん。俊平。33歳の癖に!かわいいやつ!」とか思えると、最後まで一気に読めちゃいます。

で、物語が進むと、俊平の所に、秘書がやって事になるのですが、この秘書が超キュート!!!
どんな秘書かはあえて言いません。
読んでのお楽しみ。
とにかくキュートです。可愛いすぎ。
俊平ととても良いコンビです。

前述のようにこの小説はコメディーですが、それだけじゃないです。
ハードボイルド命の俊平には、子供時代のトラウマがあったり、きちんと他人を思いやる事ができていたり、ただの「悪ふざけ」じゃないです。俊平は、「孤独」をきっちり引き受けた上で、馬鹿みたいにハードボイルドを体現しつづけているんです。
そんな、「愛すべきハードボイルド馬鹿」のお話です。

俊平の馬鹿さ加減に大笑いして、超キュートな秘書と俊平とのやりとりに大笑いして、気がつくと、ちょっと危ない事件に首をつっこんでいる。
そして、事件は意外にもかなりシリアスな方向に転がっていく。
で。事件が解決した後、大泣きしていた自分がいます。
秘書の正体については、だいたい予想できていましたが。
俊平が。徹底的に「愛すべきハードボイルド馬鹿」を貫いてて。
ほんと、愛しいヤツラだな、と。

この作者の人の荻原 浩氏の印象がガラっと変わった一冊でした。
この人の本を、こーゆー系統のものを、もっと読んでみようと思います。