母。愛ゆえの妄想。その1
タロウの保育園に、園児を人質に卑劣な凶悪犯が籠城。
知らせを聞き、保育園に向かう母。
保育園前は、既に野次馬や報道関係者に警察官でひとだかり。
中に誰も入らないように、保育園手前でロープをはり、警察官が人員整理中。
凶悪犯は、保育園内部に籠もり、莫大な金銭の要求をしている。
警察官が、必死で拡声器で呼びかけ、時間稼ぎをしている。
母が保育園に走って近づいていたその時、保育園のベランダに凶悪犯が姿を現した。
その腕の中には子供が。
子供にナイフをあて、「うるせー!いいから金持ってこい!」と叫んでいる。
その姿を遠目に捕らえる母。近づくにつれ、凶悪犯の腕の中の子供が、この広い宇宙の中でもっとも愛らしいタロウであることに気づく。
タロウは、恐怖で真っ赤な顔で泣き叫んでいる。
母は、保育園の手間5メートル。目前には、人だかり。
わずかに確認できる人々の隙間をぬって、素早く人混みの先頭に到達。
(人々をなぎ倒しでも可)
到達と同時に、先頭で人員整理をしている警察官の腰のホルスターから拳銃を抜く。
同時に安全装置をはずしながら、両手で構えて腕を伸ばしていく。
突然人混みの先頭に現れた母の姿に誰よりも最初に気づいたのは、凶悪犯に抱えられているタロウだ。
「かぁちゃん!がぁぢゃあああんんん!!!」
ベランダから、下にいる母に向かって必死で手をのばす。
それに気づいた凶悪犯が、人混みの最前列で、拳銃を両手に構え、足を肩幅に開き、わずかに腰を落とし、重心を安定させている母に気づく。
「!?!?!」
母と凶悪犯の目が合ったその時、母が発射した弾丸が凶悪犯の眉間に到達。
眉間を打ち抜かれ、全身の力が抜けていく凶悪犯。
腕の中にいたタロウが、ベランダから落ちていく。
母は、拳銃を発射したと同時に、拳銃を放り出し、保育園の門を乗り越えていた。
そのまま園庭にかけこみ、手を伸ばして、落ちてくるタロウをキャッチ。
タロウは、母の首にしがみつき泣いている。
「だいじょぶ。だいじょぶ。もうだいじょーぶ。かぁちゃんがいれば怖くないよー」
大団円。
書いてて泣きそう。
※母ひとり保育園に突入し、凶悪犯と素手で戦うバージョンも有り