「ラッシュライフ」:伊坂幸太郎
- ラッシュライフ
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- 発売元: 新潮社
- 発売日: 2005/04
- 売上ランキング: 1489
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お気に入り度:
面白かった!
すごく丁寧に作り込まれた物語だった!
4人の登場人物が、いろいろな場面ですれ違い、関連をもって、ぐるぐると話が続いていきます。
登場人物達が必ず目にしている「エッシャーのだまし絵」のように、上っていたはずが下がっていて、下がっていたはずが上っている階段のように、何が何だったのか、始まりはどこだったのか、どこへ続いていくのか。
あやふやな不安定感があるものの、自分が今いる階段は非常にどっしりとした安定感があるという不思議な感覚です。
4人の登場人物は、どれも個々の重要な問題を抱えていて、それぞれ進行形です。しかも佳境。
まるで接点のない問題を抱えながら、それぞれがふとした瞬間に一瞬だけ関わりを持ちます。
それは個々の登場人物にとっては記憶に残らないほどの小さな出会いだけど、4人全部を見渡せる読者の立場の時、彼らの瞬間的な接点を発見するのが非常に楽しく、その発見は「喜び」でさえあるのです。
例えば、冒頭の失業者が老犬と出会う事になる事件は、物語の終わり近くで、カウンセラー京子が原因だった事がわかるのです。
最初に老犬との出会いだけを読んだ時は、「よくわからないけど危ない女が出てきた」程度に読み流してしまいますが、終わり近くでそれが京子であった事が明かされ、何故京子があんな行動をしたのかは、途中の経緯で把握できます。
読んでいた時は、「そこ」がパズルのピースとは気づかないけれど、後から「そこ」がパズルのピースだという事がわかって、そこにぴたりと「京子」がはまるんです。
それが楽しい。
そんな部分がちょこちょこ出てくる。
あと、泥棒の黒澤が、どうにも魅力的すぎて、惹きつけられずにいられないです。
「重力ピエロ」にも黒澤が出ているようなので、楽しみです。
それから、最後まで残った謎として、謎の新興宗教の高橋ですねぇ。
結局、高橋は何者だったんだろう。
解体した高橋は、何故高橋の顔をしてたのか?
行方不明になってた大学生とどんな関係があったのか?
本当に神だったのか?
なんて、考えるのも面白い。
もう一度読み返してみると、きっとまた面白い!と思うのだけど、まだ読み返さないです(笑)
記憶を頼りに、「ああ、あの時のあの場面は、アレだな?」「あっちのアレも、コレだったんだな。」と、脳内パズルでしばらく遊んでいたいです。
脳内パズルに飽きて、記憶が薄れはじめた頃、もう一度読んでみたいです。
そしたら、また、きっと、もっと面白いはず!