「九十九十九」:舞城王太郎
- 九十九十九
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- 発売元: 講談社
- 発売日: 2007/01/12
- 売上ランキング: 45245
「苦しさを感じるなら、僕なんて愛さなくていいんだ」
超絶のメタ探偵・九十九十九の魂の旅。聖書/『創世記(ジェネシス)』/『ヨハネの黙示録(アポカリプス)』の見立て連続殺人を主旋律に、神/「清涼院流水(せいりょういんりゅうすい)」の喇叭(ラッパ)が吹き荒れる舞台(ダンスフロア)で踊りつづける超絶のメタ探偵・九十九十九(つくもじゅうく)の魂の旅が圧倒的文圧で語られる
”世紀の傑作”はついに王太郎の手によって書かれてしまった!「ハァレルゥヤ!」
お気に入り度:
大変だった!!
ついて行くのが大変だった!読んでいくのが大変だった!
あんまり苦労かけるなよ~って感じでした。
でも面白かったよ。私なりに満足しました。
私は、この小説の「九十九十九」というキャラクターが、舞城のモノではなく、他の作家のモノだと途中まで知らずに読んでました。
だから、小説内にでてくるキャラクターのほとんどが、清涼院流水という作家さんのキャラクターだという事も知りませんでした。
そして、清涼院流水という作家さんについては、一切の知識を持っていません。読んだ事もなければ、そういう作家さんがいた事さえ知りませんでした。
そーゆー状態で読んだので、このハナシが清涼院流水という作家さんへのトリビュートとか言われても、ちっともピンときません
私にとって、これは舞城王太郎の小説でしかないです。
だから、もとネタである清涼院流水という作家さんに関連しての読み方とか、背景とか、オリジナルの設定であるとか、そんなの全然わかりませんから、多分このハナシから感じた私の感想は、舞城王太郎からしたら検討はずれもいいところなんでしょーけども、私は面白かったので、それでいーのです(笑)
結局、モトネタ知らずに楽しんだので検討はずれな楽しみ方を許してね、と言いたいのです(笑)
なんつーのかな。パロディ映画のモトネタを知らなくても、笑っちゃったよ、という事で。
なので、九十九十九以下登場人物は、舞城のキャラであると認識した上での感想になります。
まず冒頭。
産まれた感動で、つい、「ほうな~♪」と歌ってしまい、その瞬間、あまりの美しさに医師と看護婦と母親が気絶(笑)
しばらくへその緒でぶらーんとつりさがった後、気がついた看護婦に、その美しさ故誘拐される。
しかし、誘拐して少し進んだ所で、あまりの美しさにその看護婦が気絶。
さらに通りかかった別の看護婦が、あまりに美しいので誘拐するも、数歩進んで気絶。
通りかかった妊婦が、やっぱりあまりに美しいので誘拐するも、数歩進んで気絶。
そんな事を繰り返し、地道に進んでやっと病院を出たときに、最初の看護婦が学習効果を発揮して、顔にガーゼをかけて、やっと誘拐が完全完了する。
と、こんな流れについていけるかどーか!(笑)
つか、でも、本編は、こんな流れとは全然ちがくなるんだけどね(笑)
この冒頭を受け入れた上で、もっと沢山の事を受け入れる余裕があるのかどーか(笑)
この冒頭の流れのまま疾走していくと思ったら、大間違い。
冒頭の流れとは無関係の見たこともない迷路のなかで、だらだらと迷うハメになる(笑)
しんどいよ(笑)
辛かったもん。読んでて。
なんつのかな。冒頭のすさまじいスピード感を期待しちゃダメ。むしろ忘れて。
目の前に箱があったとするでしょ。
その箱をあけたらさ、中にあるのは、箱をあけてる自分でさ、その箱の中にも箱をあけてる自分がいて、気がついたら、自分も箱をあけてる箱の中にいて、さらに、それが入ってる箱をあけてる自分もいて、マトリョーシカのような入れ子構造の、どの部分に自分がいるのかさっぱりわからなくなって
と、思ったら、そこはいつのまにか入れ子構造じゃなくて、2次元の平面構造だったもんだから、自分がいつのまにか多数存在してたけど、なんだっけ?これ?まぁ、愛する家族とご飯を食べよう。って感じ(笑)
そーいった流れの中に、「推理小説とは」「聖書の謎」「自己愛」「自己否定」「カンニバリズム」「家族愛」「小説内のキャラクターとは」とかね、なんかね、すっごいこってりどっさりなんだよ。
小説のキャラが、「小説のキャラ」について語るメタ構造もあれだけど、推理小説でありながら、推理する事を既に放棄する流れといい、色々めちゃくちゃな上に、聖書の福音のアルマゲドンの予言とか、天使とか神とかラッパとか「推理小説における見立て殺人」とか、専門知識がないとどーにもわかりにくい事が延々と続く(笑)
よーするに、ぐるぐるにひきずり回されるんですよ。
なにもしらない、わからないところを。堂々巡りに。
私は、ソレが面白かった(笑)
何の為にひきずりまわされてんのか最後までさっぱりわからなかったけど、ソレはソレで面白かったよ。
気がついたらアルマゲドンだし、首がピュンピュン降ってくるし(笑)
なんでそーなったかは理解できなかったけど、そうなった説明は延々書いてあった(笑)
それを理解しなくっても、私には、これは面白かった。
なんで面白かったかと言うとね、何もわからなくなるまで延々引きずり回されたのが面白かった(笑)
私はこれ、好きだよ。かなり。
確かにこれは、読む人によってかなりお気に入り度が分かれるだろうと思う。
モトネタの九十九十九や清涼院流水氏作品を知っている人にとっては、またきっと全然ちがった見方になるんだろうけど。