We Need To Talk About Kevin (邦題:少年は残酷な弓を射る)

自由奔放に生きてきた作家のエヴァ(ティルダ・スウィントン)はキャリアの途中で、夫フランクリン(ジョン・C・ライリー)との間に子供を授かった。ケヴィンと名付けられたその息子は、なぜか幼い頃から、母親であるエヴァにだけ反抗を繰り返し、心を開こうとしない。やがて美しく、賢い、完璧な息子へと成長したケヴィン(エズラ・ミラー)であったが、母への反抗心は少しも治まることはなかった。そしてこの悪魔のような息子は、遂にエヴァの全てを破壊するような事件を起こす……。

お気に入り度:rating_35.gif
USA版のこのDVDカバー画像は、酷いと思う(笑)

暗黒美少年の話っす。
もう、ど暗黒!!(笑)
産まれた時から、ど暗黒!!(笑)
この映画は、時系列をパズルのようにバラバラにして見せているので、かなり長い時間、エヴァが、何故いま1人でこんな寂しい生活をしているのかわからない。
フラッシュバックされる過去の映像。
幸せな恋愛時代、妊婦時代。
ただ、この妊婦時代から、エヴァは予感めいたものがあるのか、喜んではいない。
なにか、不穏な未来を感じ取っているかのように、沈んで見える。
出産直後のエヴァの様子は、もう、あからさまに沈んでる。
一応、望まぬ妊娠で、キャリアを捨てた形での出産だから、手放しでは喜べないのかもしれないけど、それにしても沈みすぎな感じ。
そんな母親の気持ちを察しているのか、乳児の頃から、母親に心を開かない赤ん坊(笑)
ちょっと笑った(笑)

現在のエヴァは、小さな家で1人住まい。
周りの住民から、いやがらせをされていて、玄関や車は真っ赤なペンキまみれ。
文句も言わず、もくもくと掃除するエヴァ。
過去の記憶では、大きくて綺麗な家で、2人の子どもと夫と暮らしていたはずなのに、今、どうしてエヴァは、こんな生活をしてるのか。
夫はどうしたのか。邪悪なケヴィンは?妹は?

そんな疑問を抱きつつ見ていくと、ケヴィンの暗黒面が次々と浮かび上がる。
あからさまに、父親に対する態度と、母親に対する態度がちがう。
父親には従順で、子どもらしく、無邪気で可愛く振る舞う。
母親には、横柄で邪悪で、反抗的。笑顔を見せない。
母親へのいやがらせの為、いつまでたってもおむつをはく(笑)
わざとトイレを覚えない(笑)
すげえ根性だと思う(笑)徹底してる(笑)

現在のエヴァ、通りすがりに殴られたりしても、反論せず。
エヴァが、ここまで憎まれる理由はなんなんだろう。

美しく成長した少年ケヴィン。お父さんに似なくてよかったね(笑)
暗黒面も、いっそう磨きがかかっていて、わざと関心を引くようなDVDを部屋においておいて、エヴァが自分のPCで再生した途端、ウィルスが暴走して、PC使い物にならなくなる(笑)

そして、妹に悲劇が。片目が失明してしまう。
犯人がケヴィンがどうかはわからないけれど、エヴァはあからさまに怪しんでいる。

夫も、妻とケヴィンの溝には気付いているものの、どうする事もできず、とうとう、自分がケヴィンを引き取って、離婚するか、というようなハナシまで出る。
そんな様子にいち早く気が付くケヴィン。
その後、最大の事件を、ケヴィンが起こす。

あんまりネタバレしたくないので、ここらでやめるけど、これ、全部、母親視点からのハナシなんだよね。
だから、母親が見ていないケヴィンが起こした事件については、非常に断片的な映像しか出ない。

考えてみると、ケヴィンは、本当にそんなに邪悪だったんだろうか?
おむつだって、やっぱり結局母親の愛情不足が原因で、本当に自分でできなかったんじゃないだろうか。
赤ん坊のあやし方だって、エヴァは、本当に不器用だった。
妹の事件の後、ケヴィンは邪悪そうに笑ったけれど、それは母親が、ケヴィンがあやしいと思ってみていたから、そう見えただけであって、本当は、悲しくて顔をゆがめたのかもしれない。

全部、エヴァの、悲劇の母親視点からしか語られていないから、なんだか、ヒロイズムに酔っているようにも見えてくる。

結局最後まで、この親子の溝は埋まらない。
それでも、ケヴィンの部屋を仕上げていくエヴァには、ケヴィンと一緒にいる覚悟が見える。

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