THE ROOM 閉ざされた森
- THE ROOM 閉ざされた森 [DVD]
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- 発売元: ビデオメーカー
- 発売日: 2007/11/02
内容紹介
オースティンファンタスティック映画祭にて最優秀賞を含め5部門、SITGESスペイン映画祭にて特別審査員賞を受賞した、本格的シチュエーションスリラー。精神のバランスに破綻をきたした青年の歪んだ愛情の行方…。「僕はただお母さんに褒めてもらいたいだけなんだ」青年はただ純粋過ぎただけ。しかし彼の行動は、徐々にエスカレートしていく。
お気に入り度:
面白かった!!!ものすごく面白かった!!!
やっぱりこの監督のサイモン・ラムリーはすげー面白いわ!超好みだわ!
ああ、やべぇ。ドはまりだわ。
日本でのDVDリリース予定が全然ない「Red White & Blue」を買ってしまう勢いでドはまりだよ。
内容紹介にある「シチュエーションスリラー」っつーのは違います。間違ってます。
この映画は、スリラーじゃない。
かといって、じゃあ、何に分類できるかってーと、わかんないです。
バリバリでネタバレするよ。
場所は、お城ぐらいある巨大な邸宅。つか、もうほぼお城。
広くて、うっそうとした森の中にポツンとある。
周りは森だから、ご近所とかいない。完全に外界から隔離されてるような感じ。
でも、綺麗な邸宅ではなくて、もう壁紙もボロボロだし、壊れた椅子とか起きっぱなしだし、ほぼ廃墟。
そこに、親子三人で暮らしてる。
父親がいて、母親は寝たきりで、あと子ども、つっても青年だけど、精神的に成長していないタイプの子で、クスリを服用していないと精神の安定や行動や感情の抑制がとれなくなる。
そして、父親が、この邸宅を売りに出すことになり、その手続きで外出しなくちゃならなくなった。
普段、母親の面倒や、息子の面倒を全てこの父親が引き受けていたんだけど、自分がいないと不安だからって、ヘルパーさんを雇って出かけた。
でも、息子はしきりに、「僕がお母さんの世話をするよ」「僕はできるよ」と父に訴える。
で、父がでかけると、息子はすっかりやる気を出して、お母さんに世話をし出す。
でも、やっぱりシモの世話とかは、嫌悪感丸出しの顔をしちゃうし、お母さんは不安で落ち着かず、ヘルパーを呼ぶようにいう。
息子は電話の受話器をはずし、やってきたヘルパーを家に入れないように、家中の鍵をかけてまわる。
これでやっとお母さんの世話は全部僕ができる!僕ならできる!お父さんにも誉めてもらえる!
この子の考えは表情や仕草にダダ漏れだから、全部わかる。
この子は悪い子じゃないの。一生懸命なの。本当に、小さい子どもと同じだから、大好きなお母さんの為に何かしたいんだし、大好きなお父さんに誉められたい。ただ、純粋。
なのに、何もかも上手くできない息子。
クスリを飲まなくたって出来るってところ見せたくて、毎朝飲んでたクスリも注射もやめてしまう。
お母さんは言うことを聞いてくれないし、漏らして臭いし、汚いし、お風呂と着替えを手伝ったけど、
ヘルパーを呼んでってうるさいから、部屋に閉じこめてしまう。
そして自分はクスリも飲まず、部屋に引きこもる。
段々幻覚が見えてくる。夢なのか妄想なのか。
翌朝、お母さんに飲ませようと、ボール一杯の大量のクスリをもって部屋にいくけど、開かない。
開けてと言うと、中からお母さんが、あなたが部屋に鍵をかけたから開けられない、と言う。
開けてと言うと、中からお母さんが、あなたが部屋に鍵をかけたから開けられない、と言う。
開けてと言うと、中からお母さんが、あなたが部屋に鍵をかけたから開けられない、と言う。
こんな押し問答が、目眩がするほど何度も続く。
そして、警察を連れてヘルパーが戻ってきて、家に押し入る。
お父さんも帰ってくる。
息子は、お母さんと屋根裏に閉じこもるが、すぐに発見されてしまう。
具合の悪くなったお母さんの緊急手術が、家の中で始まる。
その間、息子は幻覚を見続ける。部屋をめちゃくちゃに壊し、何本も自分に注射器を刺したり、自傷に走る。
夢の中では、病気でもなんでもない母親が、クスリを飲まない息子を落ち着かせようと
注射器をもって息子を説得している。逆上して、母親を刺してしまう息子。
目が覚めると、母親のお葬式。
お墓の前で、息子は母親の幻覚を見る。よろこんで、母親に抱きつく息子。
そして、幻覚の母親に刺される=自分で自分を刺す。
そうして、邸宅には父親ひとりになる。
父親は、息子の幻覚、妄想、妻の幻覚に囚われている。
で、END。
見せ方がとても巧妙で、文章で言えば、きっちり段落がある。
なるべく音楽を排除した作りなので、幻覚状態でかき鳴らされるノイジーな曲が非常に効果的。
途中、結局、母親は病気だったのか、病気じゃなかったのかわからなくなる。
最初の方は確かに病気だったんだけど、途中全然病気じゃない元気な姿で息子に注射しようと
するし。
だから、母親の死因もはっきりわからない。手術に失敗して亡くなったのか、本当に息子に
刺されて亡くなったのか。
息子に刺されたとすると、普通に息子が葬式に参列できるわけないから、そこは父親の妄想
なんじゃないかと思う。
所々、父親の妄想もまじっているから、どれが誰の妄想で、本当はなんなのかさっぱりわからない。
途中、母親の世話が上手にできない事で自傷に走ったり、部屋の中を壊しまくったりするのは、
あれは父親がした妄想、もしくは自分を息子におきかえて、父親がやった事だと思う。
何度も何度も段落の時に、巨大な邸宅がぽつん、と映される場面がはいる。
その前後には、必ず何かが起きている。
本当の事は何一つわからないけれど、とにかく、この家族は、間違いなく、互いに愛し合ってる家族だった。
息子は、父と母が大好きだし、母も夫と息子を、父も妻と息子を愛してた。
誰も憎み合ってなかった。
ちょっと、抑制がとれなくなっただけ。
だから残された父は、誰も責められず、全て自分のせいにして、息子だった幻覚を見て、
妻だった幻覚を見て、どんどん自分を壊していく。
なんつーか、どーにもならず、どんどん奈落に落ちていく感覚がはんぱない。
誰も悪くないのに。
悪意を持っている人は誰ひとりいなかったのに。
圧倒される。この空気感と空間に。
ハナシ的には、めちゃくちゃ鬱なハナシなんだけど、とても巧妙に、高等技術を使って見せられているので、それに飲まれてしまって、素晴らしいと思ってしまうのは、なんでなんだか。
演技も素晴らしかったよ。痛々しいくらいすごかった。
悲しい話だったよ。