王の男
- 王の男 スタンダード・エディション [DVD]
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- 発売元: 角川エンタテインメント
- 発売日: 2007/04/18
妖しげなタイトルが、映画のすべてを表している。16世紀に実在した朝鮮王朝第10代の王、ヨンサングン。
傍若無人で知られた彼の心を虜にしたのが、世にも美しい芸人の青年であったという物語だ。
韓国の歴史モノで、しかも男同士の愛をテーマにしながら、本作はストーリーのおもしろさで観る者をぐいぐい引き込んでいく。オープニングから魅了するのは、旅芸人コンビ、チャンセンとコンギルがみせる超人芸とコミカルな芝居。やがて漢陽の都に来たふたりは「王を笑わせる」という条件で宮廷の舞台に立つのだが、そこでの緊迫感たっぷりの出し物を始め、ブラックな笑いも誘う数々の寸劇が楽しい。
それまで女たちをはべらせてきた王が、自分でも理解できないまま、美形のコンギルに心を乱していくドラマには、随所で心をざわめかせる場面が用意される。当然、宮中は混乱するのだが、王のまっすぐな愛情も伝わってくるので、各人物に共感させる展開。
そして、この複雑な愛の関係を納得させるのが、コンギルを演じたイ・ジュンギの中性的な魅力で、彼は王とチャンセンの間で苦悩する姿も名演している。そのお国柄から「同性愛」を描くことが敬遠されてきた韓国で大ヒットをとばした本作は、韓国映画の歴史も変えるものである。
お気に入り度:
なんつーかな。
表面的なシーンのつなぎ合わせで終わったなぁ、という印象。
部分的に印象に残るシーンがいくつか入るものの、正直それらのシーンは、必ず漫画的で作為的な構図を持っていて、どこかで見た感動的なシーンに似ている。と感じてしまう。
「はい、ここ、キュンとくるとこ」「はい、ここ、ぐっとくるとこ」「そして、ここでさっきのシーン思い出して、ハッとするとこ」と、押しつけられているようにどうしても感じちゃうんだよねぇ。
ストーリーの流れの中で、そのシーンが印象に残るようになっているんじゃなくて、印象に残るシーンを先に考えておいて、とにかくそれを見せる事が優先、みたいなさ。
とにかくこの「王の男」は、表面的な薄い印象しか私には感じられなかった。
確かにコンギルは綺麗だったけど、コンギルが一番何を考えているのかわからなくってさ。
つか、コンギルとチャセンの絆が明確になるのがラストじゃあさ、なんか、しっくりこないんだよね。
コンギルがどれほど芸を好きなのか、コンギルにとってチャセンはどんな存在なのか、チャセンにとってコンギルはどんな存在なのか、チャセンはどうしてそんなに芸にこだわるのか。
これらがわかるのがラストっていうのは、なんか変だよ。
いろんなシガラミや葛藤や、絆や、愛が、徐々に見えてきた上で、ラストのあの綱渡りになったのなら、かなり泣けると思うのだけど。
コンギルが王をはっきり拒絶できない気持ちとか、チャセンへの思いとか、芸事への執着とか後回しなんだもん。
チャセンも、コンギル自身が好きなのか、コンギルとの芸が好きなのか、芸がとにかく好きなのか、なんかあやふやなままで。
私には、悲劇といえるほど物語に深さを感じられなかった。
設定的には、かなり好きな方向なんだけどなぁ。
木原敏江の「夢幻花伝」に近い設定で。
「夢幻花伝」は、すごい深いよ。
若き世阿弥が、芸事と幼なじみとの恋と上様との愛の間で、美しく舞う話だ。
「王の男」を見た人は、この本を絶対読むといいと思うよ。
愛憎に縛られながらも、舞に執着せずにはいられない思いが、まっすぐで純粋で強くて、だからものすごくせつない。
いい話なんだー。ものすっごく。
- 大江山花伝
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- 発売元: 小学館
- 発売日: 1997/05
- 売上ランキング: 121169
- おすすめ度
ラストは絶対涙出る。